« 副鼻腔炎の話 その5 | Main | まことの救い主は――イザヤ書を読む 1 »

2006.07.22

北朝鮮ミサイル発射

 今回の北朝鮮のミサイル発射で、日本の政治首脳陣の慌てふためきようは、日本国民に大きな不安を与えたのではないだろうか。大手マスコミも、それに対しては何も強力な発言をしないということは、今後の日本の国際的立場を大きく不安に陥れるものだったのではないか。

 第一に北朝鮮のミサイル発射の意図であるが、その真意はまったく不明であるとしても、少なくとも北朝鮮が要求していたアメリカとの対話に関連するものだと考えられる。そもそもアメリカが北朝鮮を「悪の枢軸」呼ばわりしたことに端を発している。北朝鮮はアメリカとの一対一の対話を望んでいる。その意図はアメリカから敵視されている問題を解決したいというものであったと思われる。これは単純な問題ではないことは今日までの推移から明らかではあるが、北朝鮮はアメリカを何とかして自国との対話の場に引き出したいという意図だったのではないか。要するに今回のミサイル発射の第一の意図は、対アメリカとの問題であったと考えられることである。

 第二に、ミサイルが落下した地点は、日本からははるか離れたロシア沿岸の日本海である。発射した方向も日本を狙ったとは考えられない。それに対しても日本の慌てふためきようはいったい何なのでしょうか。日本は直ちに国連安全保障理事会に北朝鮮に対する制裁措置を含む安保理決議をアメリカと共同で提案した。ただこれは日本がいきなりいきり立って安保理決議を提案したのに対して、アメリカがそれを支持してという順序だったのではないかと思う。この直前に小泉首相との会談で「世界の中の日米同盟」と歌い上げた手前、日本の要求を支持したのではないか。

 第三に日本政府のあの強気の発言はどこから出てきたのでしょうか。麻生外相が「ミサイルが日本に向けられているのであれば、被害を受けるまで何もしないわけにいかない」と、北朝鮮のミサイル基地に、先制攻撃を仕掛けるべきだとも伺える発言をした。また額賀防衛長官はフジテレビの番組で「敵国が確実に日本を狙って攻撃的な手段を持って、ピストルで言えば引き金に手をかけたというような時であれば、日本を守るためにどうするかは、首相、我々が判断することができると思っている」とまで言い切っている。安部官房長官は、「敵のミサイル基地を攻撃するのは自衛権の範囲」だというような発言をしている。今回のミサイルが、到底日本を狙ったとは考えられないし、北朝鮮が直接日本を攻撃するというような意図があったとも考えられない。それなのにこのようにして敵(と思いこんでいる北朝鮮)に対して先制攻撃を仕掛けんばかりの勢いであるのはどういうことなのでしょうね。小泉首相は「(自分は)ついている。プレスリーの所に行っている時にテポドンが撃たれたら格好が悪かった」と発言したと毎日新聞は報じている。不思議な温度差ではある。
 日本のこの大騒ぎに対して韓国は、そんなに大騒ぎする問題じゃないというような発言をしている。また今、対米関係を悪化させているベネズエラのランヘル副大統領は、「北朝鮮は他の国と同様に武器の実験、開発を行う権利がある」と述べ、「なぜ北朝鮮はだめで、米国は良いのか」と主張したそうだ。

 第四に安保理決議は制裁抜きで可決されたこと。日本の緊急提案に対して中国は真っ向から反対し、決議ではなく議長声明でどうかと提案した。ロシアも中国の提案を支持した。この両国は安保理で拒否権を持つ国である。日本はそれに対してあくまでも制裁を伴う決議でないと意味がないと主張した。中国は北朝鮮と話し合うから少し待ってもらいたいとアメリカに提案した。アメリカはこの中国の北朝鮮との話し合いに期待した。日本は振り上げたこぶしをどこに持っていっていいのかわからなくなって、こぶしを振り上げたまま、あたりを見回しているが、日本の提案を支持する国は見当たらないという事態になった。それでも麻生外相は「拒否権を持つ中国やロシアの意見を受け入れて、制裁措置を含む決議案を曲げるのは、国際社会の中で間違ったメッセージを出すことになる」と言った。この論理をとれば、イスラエルに対する制裁決議のたびにアメリカは拒否権を連発して、国際社会の中で間違ったメッセージを出し続けたということになるのではないか。そういうアメリカの同盟国として日本の外相が、このような非論理的で軽薄な発言をするというのはいかがなものでしょうかね。結局中国とアメリカが話し合った結果、中国の提案した議長声明を採択することになった。日本は直接狙われたのでもないし、直接攻撃されたのでもない。漁船が操業を停止して帰港するという間接的な被害はあったが、まして直接なにか被害を受けたわけでもない。それにもかかわらずあの大騒ぎはなんだったのか。さらには安保理決議は提案したものの、中国とアメリカの話し合いには直接加わることさえできなかったというのは、日本の外交の一人騒ぎに終わったという感じではないか。
 ほぼ同時にイスラエルとレバノンが戦争状態に入って、安保理では北朝鮮の問題に続いてイスラエルに対する停戦要求を議事に乗せたが、アメリカの反対によって決議も、議長声明さえも出せなかった。これはまさに国際社会のなかで、間違ったメッセージを出したことになるのではないか。イスラエルは実験的にミサイルを発射したのではなくて、隣国レバノンに激しい爆撃を行なって、公共施設を破壊し、何人もの人を殺害したのである。イスラエル・レバノン戦争のほうが、国連が真剣に取り組むべき大きな問題なのではないか。

 最後にこの騒動を通して感じたことは、いわゆるポスト小泉の問題である。今回の緊張事態の結果、安部官房長官への支持が高まったと思われる。そして麻生外相、額賀防衛庁長官らの強硬路線を取る人たちが閣僚に入ると、日本は確実に間違った方向に行くのではないかと恐れる。また今回の北朝鮮への議長声明決議から、私は第二次世界大戦直前に行なわれたワシントン、ジュネーブなどの世界軍縮会議のことが思い出された。この軍縮会議で英・米・日の軍艦保有割合が5:5:3に決められたことに対して、日本国内ではさまざまな大きな問題が起こった。そしてこの屈辱的な割合に反発して日本は軍備を増強し、真珠湾攻撃を発端として、太平洋で戦争を引き起こしたことが思い出された。やがて北朝鮮の潜水艦が東京湾に侵入して横須賀基地に停泊中の米原子力空母に対して攻撃し轟沈させたなどという事態になるのではないのか。

« 副鼻腔炎の話 その5 | Main | まことの救い主は――イザヤ書を読む 1 »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18113/11054811

Listed below are links to weblogs that reference 北朝鮮ミサイル発射:

« 副鼻腔炎の話 その5 | Main | まことの救い主は――イザヤ書を読む 1 »

August 2015
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ