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2007.11.16

ヒルティの『眠られぬ夜のために』を読む

 岩波文庫版 草間平作、大和邦太郎共訳。1973年。
 
 この本はずいぶん以前に買ってはじめのほうしか読んでいなかった。今回全部を読了したが、二分冊になっていて第二部があるという事には気づいていなかった。
 この第一部は一年間の日付が入っていて、毎日著者の短いエッセーが読めるようになっている。一日分の分量は、だいたい文庫本の一ページ分くらいである。
 その内容は特に聖書の解説とか、聖書のことばによる短い説教とかというものではなくて、著者の深い思索からほとばしり出てくるような、豊かな内容のある文章である。それは哲学書とも違う。エッセーといったほうがいいかもしれない。しかしこれが本当の意味での「エッセー」というものなのかもしれない。それは非常に深い思想に裏付けられていて、読む者に深い慰めを与えるものである。これほど慰めに満ちた文章は他にはないと、しばしば感動したものである。

 たとえば今日の11月16日という日付のところには、たとい真の聖者であっても、その生涯の晩年には、あまり重要なことばが残されてはいないというような事が書かれている。そして「時折、晩年に書かれた数少ない言葉が残っている」としてバイヨンのエリザベトのことばが引用されている。「わたしは自分がいのちの息吹のように軽やかなのを感じます」と。
 人は生きてことばを残す。しかし人生というものは決していのちの息吹のように軽いものではない。反対にそれは重いものである。誰もが自分の人生を振り返れば、気まずいことの多さのみが思い出されるものではないか。私も一人のキリスト者として生きてきたが、ほんとうに自分の人生が軽やかだったと言い切れるのだろうか。確かにキリストを知らずに生きた30数年は悲惨だったことは言える。キリスト者として生きてきたその後の人生を振り返っても、やはり気まずさからは決して逃れられないようであった。
 でも人生の最後には、天の御国を思いながら、「いのちの息吹のように軽やか」でありたいと思う。

 私はヒルティについてはほとんど知らなかったのであるが、最後の訳者の解説を読んで、この人はほんとうに偉大な人、天才、あるいは思想の世界での巨人だったのだなと、気づかされたものである。キリスト教思想家としても超一級であった言えるのではないか。

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