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2008.02.18

笙野頼子『二百回忌』

 笙野頼子の『三冠小説集』(河出文庫)というのを読んだ。一言で言って「とてもおもしろかった」。「タイムスリップ・コンビナート」「二百回忌」「なにもしていない」という三つの作品が入っている。それぞれ芥川賞(1994年)、三島由紀夫賞(1994年)、野間文芸新人賞(1991年)を受賞したもの。それで「三冠王」と呼ばれていた。

 そのころもてはやされていたことを記憶しているが、作品を読んだことがなかった。話題になっていたので読もうかと思ったこともあるが、私は私小説的なものはあまり好きではないので、手に取ることはなかった。今回ひまもあったので読んでみた。などと無責任な読み方ではあるが、なんと表現していいのか分からないが、とにかくおもしろかったという一言。あまりのおもしろさに、すぐに「二百回忌」を読み返してしまったくらい。

 この作家の文章はすごい説得力があると思う。ちょうど大江健三郎の文章が、彼独特の四国の山の中の情景を、実に説得力のある表現でぐいぐいと引きつけるような感じで表現するのであるが、それと似ている。あり得ないような出来事を見事に描き出してしまう。その見事さにはただただあきれるというか、感心させられるというか、とにかく文章というものはあり得ないことを、目の前に現実として描き出してしまうということにあらためて納得させられる。この作家の文章には、そういう強力があると言える。しかもその「物語」のおもしろさもまた格別である。

 二百回忌に、それが行われる郷里の「本家」に帰って行くという話であるが、二百回忌には何事もめでたくしなければならず、このときには時間も空間も狂ってしまい、先祖たちがみなよみがえってくるという。すべてのことがめでたく執り行われるというよりも、何事が起こってもすべてはめでたいとしなければならないというので、次から次へとあり得ない出来事が展開されていく。その大騒ぎが終わって東京の自宅に戻ってくるが、読者もそこでほっとするのであるが最後に「それからも時々、買い置きのケシゴムが全部蒲鉾になるという程度の事は起こった」というわけである。

 こんなにおもしろい小説は読んだことがないと、やや興奮気味である。

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