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2011.09.06

『チボの狂宴』

『チボの狂宴』という本を読んだ。バルガス=リョサという作家の長編小説。作品社というところから発行されたもの。四六版で518ページもあった。図書館で借りたので、貸し出し期限の三週間で読み終わるかどうか不安だったが、なんと二週間で読了してしまった。すごく面白かった。

バルガス=リョサという作家はペルーの作家。この作品で2010年のノーベル文学賞に決定したらしい。

「チボ」というのはスペイン語で「山羊」という意味らしい。そしてこの作品はドミニカ共和国の大統領よりさらに上に位置した「総督」のトルヒーリョという実在の独裁者の暗殺という歴史的事件を、物語の土台として描いている。「チボ」というのはこの独裁者を指しているらしいし、「狂宴」と訳されたことばにも、さまざまな仕掛けがあると、訳者解説で述べられていた。

この作家の文章はすごい迫力がある。読んでいてそのパワーには圧倒されるようだ。このトルヒーリョのような独裁者は、人間の歴史上に数え切れないほど登場した。今でもカダフィなどという人物もいた。そのほかにもさまざまな人物が実在するが、人間社会というものは、このような独裁者を常に求めているのではないか。人間というものはそういうあらゆる権力を渇望するものであり、そういう罪人の集合体が人間社会なのだ。すなわち実力のある権力者を熱狂的に迎えるというのが、罪人人間の社会らしい。あらゆるスポーツに熱狂するのも同じ構造ではないか。

この『チボの狂宴』という作品は、独裁者暗殺という緊迫した物語と同時に、その独裁政治の支配に巻き込まれた一人の女性の破滅と再生を描いている。この女性に関するところは、この長編小説の最初と最後に出てくるだけ。しかし作家はこのことを重要なこととして描きたかったのだろう。感動的だった。

この少女を独裁者の魔手から救い出すために取った手段を描くあたりの文章はものすごい迫力だと思った。まさに一瞬の出来事であった。ドミニカ共和国にあった修道院は、この少女を独裁者の手から保護すると直ちに米国にある同じ派の修道院に逃れさせる。巨大な権力の物語が語られた背景からは、この一瞬の対抗処置を描くあたりの文章は、なんとそれはわずか一ページにしかすぎなかったが、すごい迫力であった。

全体として「人間存在への愛」が語られていると思う。

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