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2011.12.10

『存在の耐えられない軽さ』を読む

ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』というのを、ようやく読了した。これは難しかった。タイトルも難しいが中は哲学書を読んでいるようだった。しかしカバーの後ろ側の宣伝文句によると「究極の恋愛小説」だそうだ。

この恋愛小説は、1968年のチェコ事件、すなわちソ連によるチェコ侵攻という事件が背景になって、物語が展開する。この動乱が元になった政治的混乱の中で、作者のクンデラは国外追放を余儀なくされ国籍もはく奪されてしまう。それ以後、彼はフランスで作家として活躍する。

チェコという国は、モラビアとボヘミアという二つの歴史を持った民族によって構成されている。スメタナとかドボルザークなどという有名な交響曲作家がいる。そういう印象から私は豊かな自然環境を背景とした人々の生活を思い浮かべることができる。

医師のトマーシュと奔放な画家サビナとの出会いから物語が展開していく。ふたりは上の歴史的事件の中で愛をはぐくんでいくが、最後は結ばれずに終わるらしい。そういう物語の中で、サビナという女性の情感が生き生きと描かれていく。このサビナという女性を描く文章の隅々からは、チェコ人というのはこういう豊かな人間性を持っているのかと思わせられる。

これは映画化されている。私は多分テレビで放映されたものを見たはずだが、いくつかの場面は今でも印象的に記憶に残っている。人間一人ひとりの存在は重いものである。しかしいつの時代のどの民族の中にも政治的な動乱があり、そういう中で一人の人間の存在は揺れ動かされていく。このような時代的背景の中で、民族の豊かな歴史を物語っていくこの作品は、ほんとうにすばらしい内容を持っていると思う。とてもいい小説を読んだという気持である。

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