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2012.07.11

バルガス=リョサ著『チボの狂宴』

作品社刊、四六版、538ページ。再読。前回は図書館で借りて読んだ。あまりのおもしろさに圧倒されてしまって、今回ある人からいただいた図書券を使って購入した。

中米のカリブ海にあるドミニカ共和国で、31年間も続けた独裁者トルヒーリョの暗殺事件という、実際にあった事件を中心に描く。この作家の物語の語り方というものは、ものすごい迫力だと思う。多彩な人物が登場し、さまざまな視点から物語が語られていく。時間軸もさまざまに変化し、いきなり過去の出来事に帰ったり、フラッシュバックという手法が、きらめくように挿入されるとか、読む者は腰を入れて読まなければとてもついていけないというもの。そのような読者を無理やりに引きずっていくという物語のパワーはすごい。図書館で借りたときには、返却期限の三週間で読み切れるかどうか不安だったが、実際には一週間で読み終わってしまった。

独裁者というものはその人一人で成立するものではなく、その独裁者に名誉欲とかあらゆる物欲とか、その人のすべてを支配され、操作されている人たちの集団によって成立するというもの。それは人間の最悪の罪の現実である。

独裁者を襲撃するというシナリオは成功するが、それをきっかけに軍を支配して新しい国家を成立させる役割の人が、一瞬の決断をしそこなって、革命はあえなく崩壊していく。一方そういう欲望に金縛りになっている父親の手によって、独裁者の性的玩具として提供される娘の恐ろしい話は、危険を逃れたその少女が救いを求めて駆け込んだカトリックの修道院の手によって救い出され、同じ派の米国にある修道院へ送り出されるあっという間の救出劇を描く話も見事である。

「チボ」というのはスペイン語で「山羊」という意味。そしてこれは独裁者トルヒーリョを指している。「狂宴」という語も、訳者解説によれば、さまざまな仕掛けがされているということである。

全体として人間の悪も善も、すべてがえぐりだされるようにして物語られていく。独裁者というものは人間にとっては最高の欲求の目標なのではないかとさえ思える。それにしても今の世界を支配している民主主義というものも、これが最善なのかどうかも怪しいものだと思う。原発再稼働というシナリオも見えない手によって操られているという恐怖を感じる。

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